クライアント担当者
羽生市
子育て支援課 高田利泰様(2018年~2023年まで同市農政課所属)
農政課 竹見優里花様
(所属・役職はインタビュー時点のものを掲載)
事業・プロジェクト内容
水田地帯が広がる埼玉県北部の羽生市。担い手の高齢化によって持続性に黄信号が灯っていた市内三田ヶ谷地区24haの水田を畑地化し、企業など新しい担い手に貸し出す農業団地の整備構想が持ち上がったのが2018年のことでした。羽生市はコンサルタントに起用したアグリメディアのネットワークなどを活用して企業の農業参入を推進。「羽生チャレンジファーム」と名付けられた農業団地は現在、5社が進出する国内有数の園芸エリアに成長しています。
コメから野菜・果樹へ、一大産地づくりを推進
高田様 私が農政課に配属となったのは2018年春なのですが、ちょうど同じ時期にチャレンジファームの整備方針を掲げた「羽生市観光農園等基本構想」が完成しました。私の仕事はこの構想を実行に移してチャレンジファームを具体化させることでした。背景にあったのが、水田経営の厳しさでした。
羽生市は農地の85%が水田なのですが、地権者自らが耕作しているケースだけでなく、地権者が他者に貸し出しているケースでも、耕作者の高齢化が進んでいました。5年後、10年後はどうなるのだろう、耕作放棄地がもっと増えるのではないか、そんな危機感がありました。野菜や果樹などの高収益作物をつくるチャレンジファームを整備することで、稲作一辺倒だった羽生市の農業を転換しようというのが、基本構想の狙いでした。
アグリメディアと出会ったのは、私たちが官公庁など関係する機関に対して基本構想を説明して回っていた頃でした。埼玉県庁農林部の方の紹介でアグリメディアの諸藤社長らと面談したのです。農業求人サービスを手がけるアグリメディアは農業参入企業との接点が豊富だったので、チャレンジファームの実現を支援してもらえると考え、所定の手続きを経てコンサルタントの立場でプロジェクトに入ってもらいました。
企業誘致のカギはアグリメディアの発信力・企画力
動き始めてみたものの、最初は右も左もわからない状態でした。どうしよう、どうしようの連続でしたね。アグリメディアの担当者と話し合う中で、徐々に具体化の道筋が見えてきたような気がします。ありがたかったのはアグリメディアの発信力、企画力でした。こうしたテーマはどうしても行政は弱いので、サポートは心強いものがありました。チャレンジファームに関心を持つ企業や地権者を対象とした説明会の企画に入ってもらったほか、メディアやSNSを通じた情報発信に力を入れてもらいました。
発信を続けてもらう中で徐々にチャレンジファームの知名度が上がり、関心を持つ企業が増えていきました。アグリメディアには視察という名目で様々な企業を連れてきてもらいましたね。当初、私たちには農業に参入する企業といっても確たるイメージがなかったのですが、こうした企業担当者とやり取りする中で、行政側の解像度が上がっていきました。
ちょうど農業参入への関心が高まっていた時期であったことも追い風でした。チャレンジファームの1号案件として、地元スーパーのケンゾーがイチゴの観光農園で進出することが決まって以降は、進出企業がスムースに決まるようになりました。
進出企業の1社であるハーブ生産のポタジェガーデンは、長らく近隣自治体を生産拠点としていましたが、圃場の分散・点在に悩まされ、面的にまとまった農地を探していたそうです。アグリメディアが農業求人サービスの取引先である関係を生かしてポタジェガーデンと私たちを引き合わしてくれ、いまでは圃場に加え本社もチャレンジファームに移すほど地域に貢献する存在となりました。
アグリメディアには立ち上げ当初から、ケンゾーやポタジェガーデンといった企業の進出是非を判断する審査委員会の委員を務めてもらっています。とくに、企業が提出する事業計画の妥当性の判断などに関して専門性を発揮してもらっています。
農業を儲かるビジネスに、市職員に新たな視点を提供
手島様 私は高田の後任としてチャレンジファームの担当になりました。それまでは農政課職員として市内の個人農家とばかり接していたので、企業との付き合いはありませんでした。だからいま、毎日がすごく新鮮なんです。アグリメディアが連れてくる企業の方々は、農業ビジネスでいかに儲けるかという視点で話をされるので、たいへん勉強になっています。
これまでチャレンジファームは農業生産を行う企業の誘致に力を入れてきましたが、アグリメディアが連れてくる企業と議論する中で、考えが少しずつ変わってきています。スマート農業関連の機器やソフトウェアの実証、生産データの管理といった直接的に農業生産するわけではないけれども農業の発展に欠かせない技術などを持つプレーヤーもチャレンジファームに巻き込むといいのではないかと考えています。
アグリメディアを核に進出企業同士で連携を
高田様 アグリメディアの担当者とは年が同じこともあり、やりやすかったですね。とにかくレスポンスが早い。アドバイスが的確だし、こちらが投げればすぐ返ってきました。それと、できる、できない、あるいは難しいといった判断をはっきり言ってくれる点がありがたかったです。
アグリメディアには2023年からチャレンジファームから程近い場所にある直売所や飲食の複合施設「キヤッセ羽生」の指定管理者にも就いてもらっています。チャレンジファーム産のイチゴやミニトマトを訴求した販売棚が直売所の店頭にできるなど、文字通り地産地消の好循環が生まれています。
チャレンジファームにはせっかくいい企業が集まったので、もっと企業間の連携を深めてもらいたいですね。たとえば、いま進出企業は草刈り機を共同購入して相互に融通し合っていますが、その仕組みを農業人材などもっと他の領域にも広げることはできないでしょうか。アグリメディアが中心となり、企業が横断的に連携できるシステムをつくって、羽生の農業を盛り上げてもらいたいですね。