依頼を受けた背景
Ａ市では、「農業振興ビジョン（以下ビジョン）」の再改訂に向けて、現行ビジョンの課題分析と社会情勢の変化への対応が必要とされていました。以前の改訂から数年が経過し、農業を取り巻く環境は大きく変化。担い手の高齢化や後継者不足の深刻化、気候変動による生産への影響、消費者ニーズの多様化、スマート農業技術の進展など、新たな課題と機会に直面していました。
また、国においても食料・農業・農村基本法の改正や、みどりの食料システム戦略の推進など、農業政策の大きな転換期を迎えており、これらの動向を踏まえた地域農業政策の再構築が求められていました。
こうした状況下において当社は、Ａ市より新たな農業振興の方向性を定めるため、市の特色や強みを生かした、実現性と独自性を伴うビジョン改訂支援を委託されました。
業務の目的
現行ビジョンの課題や社会情勢の変化を調査分析し、今後４年間の農業振興の方向性や施策を再検討。Ａ市の特色や強みを生かした実現性と独自性を伴うビジョンの改訂を支援。
実現性の担保：データに基づく現状分析と、実行可能な施策の提案
独自性の創出：Ａ市ならではの強みを活かした戦略立案
行政計画改訂における課題
＜一般的な課題＞
前例踏襲型の計画で新規性に欠けるデータ分析や最新動向の把握が不十分庁内リソース不足で専門的検討が困難関係者との調整や合意形成に時間を要する実効性の低い抽象的な目標設定
＜当社のアプローチ＞
最新データと他自治体事例の徹底調査農業現場を知る専門家による分析効率的なプロジェクト管理と資料作成意見交換会等の運営サポート測定可能なKPI設定と具体的施策提案
実施内容
＜各種データの調査分析＞
国の法改正等を含む農業分野の最新動向調査
食料・農業・農村基本法の改正内容、みどりの食料システム戦略、有機農業推進の動き、スマート農業の最新技術動向など、国レベルの政策変化を網羅的に調査し、地域農業への影響を分析しました。
- 社会情勢・消費者動向の分析
人口減少・高齢化、食の安全志向の高まり、地産地消への関心増加、SDGsへの意識向上など、農業を取り巻く社会環境の変化を多角的に分析しました。
- 市提供データの詳細分析
過去のアンケート結果、農林業センサス、生産統計、経営体数の推移など、市が保有する各種データを専門的視点から分析し、課題と機会を抽出しました。
- ベンチマーク自治体調査
Ａ市と類似する地理的条件、人口規模、農業構造などを持つ自治体の農業ビジョンや計画を詳細調査。先進的な取り組み事例や効果的な施策を抽出し、Ａ市への適用可能性を検討しました。
＜消費者の農業に対するアンケート＞
- 調査設計と項目設定
消費者の農業への関心度、購買行動、価格感覚、求める品質など、マーケティング視点から必要な調査項目を設計。オンラインを活用した効果的なアンケート調査手法を提案しました。
- 調査実施と分析
Ａ市民を対象に調査を実施し、統計的手法を用いた分析を実施。年代別・属性別の傾向分析をはじめ、様々な視点から分析を行い、今後のＡ市における施策立案の基礎となる資料を作成しました。
- 施策への反映
調査結果から得られた消費者インサイトをビジョンの各施策に反映。需要サイドの視点を取り入れることで、生産者目線だけでない包摂的な計画を策定しました。
＜ビジョン改訂の素案作成＞
- コンセプト・ストーリー設計
地理的特性、歴史的背景、既存の農業資源など、「Ａ市の強み」を最大限活かした一貫性のあるビジョンストーリーを構築。単なる施策の羅列ではなく、市民・農業者・関係者が共感できる将来像を描きました。
- KPI再設定と施策の精査
SMART原則(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)に基づき、実効性のあるKPIを設定。既存施策の効果検証を行い、継続・見直し・新規追加の判断基準を明確化。限られた予算・人員で最大効果を生む施策の優先順位付けを実施しました。
- 素案の作成とデザイン刷新
最新の統計データ、法令、事例を反映し、軸となる内容の大幅な改訂を実施。わかかりやすい図表の挿入により視覚的な理解を促進し、読み手に訴求力のある構成としました。
当社の強み
＜農業現場を知る専門性＞
日本最大級の農業専門求人サイト「あぐりナビ」の運営を通じて蓄積した、全国18.5万人程（2025年8月時点）の就農希望者データベースと、全国９万程の農業関連企業や団体とのネットワーク。現場の生の声と最新トレンドを熟知した専門家が、机上の空論ではない実践的な提案を行います。
＜データドリブンなアプローチ＞
豊富な統計データ分析実績と、アンケート調査・市場調査のノウハウ。主観的な意見ではなく、客観的なデータに基づいた戦略立案により、説得力のある計画策定を支援します。行政の意思決定に必要なエビデンスを的確に提供します。
＜行政実務への理解＞
多数の自治体へのコンサルティング実績により、行政特有の手続き、議会対応、パブリックコメント対応、予算制約などを深く理解。行政担当者の視点に立ち、使いやすく説明しやすい資料作成と、効率的なプロジェクト進行を実現します。
＜包括的なサポート体制＞
調査・分析から計画策定、関係者調整、資料作成まで、一気通貫でサポート。農業参入支援、人材マッチング、販路開拓など多様な事業を展開する当社だからこそ、ビジョン策定後の実行支援まで見据えた提案が可能です。