新しい年を迎え、2026年も農業デジタル通信をお届けしていきます。本記事では、2025年の日本農業を振り返り、これからの課題を整理します。2025年は、日本の農業が、これまでの前提だけでは語れなくなったことが、多くの人に意識される一年だったのではないでしょうか。 主食である米の価格上昇は、農業を生産者だけの問題ではなく、 私たちの暮らしに直結する出来事として実感させるきっかけとなりました。気候変動や獣害の広がり、農業の担い手や経営の形の変化など、農業を取り巻く変化が、 消費者の目にも見える形で現れ始めています。本記事では、2025年の日本農業で何が起きていたのかを、独自に5つのトピックに整理して振り返ってみたいと思います。
1位|「令和の米騒動」と農政― 価格高騰が突きつけた、需給と政策の不安定さ ―2025年、私たちの生活に最も大きな影響を与えた出来事の一つが、米をめぐる混乱でした。 価格の急上昇や店頭から米が消える光景は、農業の問題が一気に生活の問題として可視化された、象徴的な出来事だったと言えると思います。政権交代に伴う農政方針の揺れや、備蓄米放出をめぐる対応は、現場に大きな不安と戸惑いをもたらしました。 需給調整の難しさは、生産者と消費者の双方に突きつけられた課題でした。米は単なる作物ではなく、日本農業全体の構造や政策の不安定さを映し出す存在であることを、あらためて意識させられた一年でした。

2位|生産基盤の変化が一気に表面化した一年― 猛暑・獣害と人の減少、物流危機が同時に農業を直撃 ―記録的な猛暑の常態化、獣害の深刻化、そして物流制約とコスト上昇による経営圧迫。 2025年は、これまで個別に語られてきた課題が、「生産基盤を取り巻く変化が急激に進んでいる」こととして一体的に意識されるようになった一年でした。獣害の拡大は、野生動物そのものの増加というよりも、人が土地を管理しきれなくなってきたことの表れと捉えることもできます。 中山間地域を中心に、人の手が入りにくくなった農地が増えることで、人と野生動物の境界線は、徐々に曖昧になりつつあります。猛暑や物流環境の変化といった外部要因も、農業経営にとって無視できない影響を及ぼし始めており、これまでの前提で経営を続けることの難しさを、多くの現場が実感した一年でした。

3位|農林業センサスが示した構造転換― 大規模経営が農地の過半を占める時代へ ―5年に一度の「農林業センサス」の結果は、まさに今の日本農業の縮図です。農林業センサスの公表により、大規模経営体が農地の過半を担うという構造が、数字として明確に示されました。農地の集約や法人化は、もはや将来の話ではなく、すでに現実として進行しています。 一方で、効率化の波に取り残されがちな中山間地域では、水路の管理や草刈りといった「村の機能」を誰が担うのか。集落の維持という重い課題が改めて浮き彫りになりました。

4位|食料安全保障が“現実の政策課題”になった年― 基本法改正と肥料国産化の動き ―四半世紀ぶりに改正された基本法が施行され、4月には新しい「食料・農業・農村基本計画」が閣議決定されました。最大のポイントは「食料安全保障」がど真ん中に据えられたこと。平時からの供給体制や、適正な価格形成が、具体的な課題として語られるようになっています。肥料の国産化に向け、下水汚泥や海水から資源を回収する技術が進展したことも、象徴的な動きでした。 輸入依存の高い構造をどう補完していくのか。政策と技術の両面から問われ始めた一年でした。

5位|AIの日常浸透、農業経営のOSに― 乾田直播・植物工場・AIが日常に近づいた ―もはやAIは「未来の技術」ではなく、農業経営の「OS(基盤)」になりつつあります。 自動走行トラクターなどのハードウェアだけでなく、画像生成AIによるブランディング、チャットボットによる栽培マニュアルの整理など、事務・経営面でのAI活用が劇的に進んだ一年でもありました。技術そのものよりも、それをどのように取り入れ、活用していくかによって、経営の進め方に少しずつ違いが生まれ始めています。

2026年に向けて2025年は、長年積み重なってきた課題が、一気に表面化した一年でした。農業が一部の人だけの問題ではなく、すべての人の暮らしと深く結びついていることを、あらためて浮かび上がらせたように思います。
一方で、それらに向き合うための選択肢や技術も、少しずつ出そろい始めた気がしています。2026年は、それらを「どう使うのか」「誰が担うのか」が、より具体的に問われる年になるのではないでしょうか。
農業デジタル通信では、今後も現場の動きや政策、企業の取り組みを、テーマごとに追っていきたいと思います。農業を取り巻く変化を、専門家だけでなく、すべての人に関わる「食の問題」として捉え直し、考えるきっかけをつくり続けていきたいと考えています。本年も引き続きよろしくお願いします。

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